凛の趣味アトリエ

趣味で創作したものを少しづつ書いていきます

【小説】学園バトルロワイヤル! 【1話】

ーー伊藤 優ーー

ーガタンッ

「……っ!!」

頭の痛みに眼が覚める。
頭を机にもたげていたためかうっ血している。

触ってみると少しコブになっているようだ

 

(ここはどころう?)

よくある教室のよくある机で寝てしまっていたようだ。


周りには見知らぬ人々。

(…30人くらいかな?)

机が綺麗に整列して並んでいる。

服装を見ると皆が同じ学生服を着ている。

自分の服装も同じ制服だったが、見慣れた顔はどこにもなかった。
幾人かの話し声が聞こえるが、そのよそよそしさを見るとみんなお互いのことを知らないみたいだ。

 

ー?
(なんだ、あれ)
教室の後ろに大きな自動販売機のようなものが置いてある。
見た目は自動販売機に似ているが中心にタッチパネルのようなものがあり、大きな取り出し口が2つ付いている。

 

周りを見渡していると、左前の男性と目が合った。

机に座ったまま話しをしてみる。

「ここって、どこか分かる?」

男性は聞こえているのか、反応が薄い。

もう一度聞こうかと迷っていると
やっと返答した。

『うーん…わからないなー。
なんか全然思い出せないんだよね。
君は何か知らない?』

反応が無いと思っていたら、考えていたようだ。

「うーん…」
そう言われてみると、なんでここにいるのかも、どうやってここまで来たのかも覚えていない。


『昨日の夜ご飯は?』

「えっ!?」

『まあまあ、いいから。』

考えてみるが……
(思い出せない!?)

僕の表情を見ると、男は察したように頷く。

『そうなんだよねー。
全然思い出せないんだよね。』

 

家族、友人…何も思い出せない。
寝起きで意識がはっきりしてないだけなのか、それとも何か他の理由があるのか?
考えれば考えるほど記憶が無いことに気付く。
真っ暗の穴の中で遭難しているような
妙な不安が押し寄せて来る。

男は空気の重さを感じたのか、それとも同じことを考えていたのか

『まあ、そのうち思い出すでしょー。』
と言った。


ーふと、疑問が浮かんだ。

「僕の名前は伊藤 優《イトウ ユウ》
君の名前は?」

『遠藤 相太《エンドウ ソウタ》だよー。
好きな食べ物はメロンだよ。
…あれ?自分の名前は覚えてるね。』

「それと、メロンが好きなこともね」

記憶が全く無いという不安感の中で光を見つけた気がして、少し嬉しくなった。