凛の趣味アトリエ

趣味で創作したものを少しづつ書いていきます

【小説】学園バトルロワイヤル!【4話】

【ーでは、以上10名に盛大な拍手を。
えー、次に最近の君たちの素行について…】

いつの間にか表彰され終わったようで、壇奥にいる初老の男性がまた話し始める。
外がピカッと光った。
少し遅れて大きな音が体育館に響く。
『やぁっ…』
横の少女が小さな悲鳴を上げる。
雷が鳴り始めた。

「大丈夫?」
『…うん』
小さく頷く。

もう一度窓を見ると外は真っ暗になっていた。

【では、今後気をつけて生活に励むようーーブチッ】
外が大きく光り、ほぼ同時に強烈な破壊音が響く。
体育館が真っ暗になりほとんど見えなくなる。

辺りがざわつき始める。
『今のヤバくない?』
『絶対落ちたよね』

『ただの停電だ。静かに!
すぐ回復するからじっとしてなさい。』
先生たちが生徒を静かにさせる。

 

ーピカッ
外の光が一層強調される。
そしてまた光る。

ざわつきはやまない。


ーピカッ

(ーあれ??)
窓から差し込む光に黒い影が映る。
不思議に思い、窓を見てみると黒い塊がもぞもぞと窓を覆っている。

それが何か分からないうちに天井の照明に光が灯った。

壇上にいた初老はいつの間にか筋骨隆々ガッチリとしたの若い男性に変わっていた。
【やあ、諸君。
これから君たちは捕虜となってもらう】

みんなが唖然としているうちに、その男が指を鳴らした。
すると、全ての窓が割れ、先ほど黒い塊が体育館に大量になだれ込んできた。

 

『もっ、モンスターだ!!』
全員が逃げ惑う。


2階に付けられた窓から壇上を通って黒い塊が体育館になだれ込んでくる。

『イヤー!!』
『早く出ろよ!!やつらが来ちまう!!』
一斉に出入り口の鉄の扉に向かう。

扉の近くまで来て出ようとしたが人が詰まって中々避難が進まない。


ふと、先ほど座っていた場所に目をやる。
そこには、先ほど雷に怯えていたあの少女がいた。
そしてその前に、2mはあろうかという大きな虫のようなモンスターが口を開けてゆっくりと少女に近づいていた。

少女は恐怖で立つことがままならないようだ。
地面を這ってそのモンスターから離れようとする。
しかし、モンスターと少女の距離はじりじりと近づいていく。

(ーふざけるな!!)

扉の前の人を押しのけて、近くにあった消化器を手にする。
それを持ち、モンスターに向かって走る。

「うおぉおぉ!!!」

モンスターがこちらに気付きこちらを向いた瞬間、消化器でモンスターの頭を攻撃する。

(効いてる!!)

ひるんだモンスターから少女を引き離し、扉まで引っ張っていく。

『う、後ろ!!』
少女の言葉に、後ろに振り返る。


(ー!!)
先ほど攻撃した消化器が飛んでくる

少女を背にし、右腕で防御する。

ーガンッ
「くっ!!」

右腕に激痛が走る。

先ほどの虫型のモンスターとは違う腕の太い猿のようなモンスターが投げたようだ。
その猿は高くジャンプすると、頭めがけて殴りかかってきた。

扉の方に向かって少女の背中を押すと、頭に重い音が響いた。

【小説】学園バトルロワイヤル!【3話】

ーー…年1組 石井 瞬《イシイ シュン》】
『ハイ!』

元気な男性の声にハッとする。
先ほどの声の主が壇上に上がる。
その後、次々と名前が呼ばれ、何人かが壇上に並び始める。

壇下では男子と女子が分かれて交互に列になって座っている。


【ーー3組仙石 陣《センゴク ジン》】
『ハイッッ!!』
後ろからひときわ大きな声が響いた。
それに反応してか笑い声が聞こえる。
その陣と言う男性は、手を大きく振り、自慢気に行進しながら壇上に上がる。

陣は壇上の最後尾についた。

 

並び終えたのか壇の奥にいる初老の男性にマイクが切り替わる。
最初に呼ばれた石井という男性が壇前に移動する。
【えー、あなたは本校の持久走大会において優秀な…】

どうやらマラソン大会の表彰のようだ。
自分に関係の無い朝礼ほど眠いものは無い。
だが、うまく寝ないと体育館の端にいる先生に叩かれそうだ。

次々と賞状が渡されていく。

【ー以下、同文。】
【ありがとうございます!!
キーーーン
ーブチッ】
仙石陣だ。

マイクにまで入るその声はハウリングを起こしたようだ。
放送室の人がマイクを切り、妙な静けさが漂う。

幾人かの人が空気に耐えかねて笑い出す。

 

始まった笑い声は次第に大きくなる。

自分も思わず笑ってしまった。
ふと、横の女の子が話しかける。
『笑っちゃっ、可哀想だよ。』
そう言いながらも横の女の子は笑いに堪えているのか顔が赤い。
「大丈夫だよ。陣はあーゆうやつだから。」

壇上を見ると陣は優越感からか全く気にしていない様に見える。

体育館の端にいた先生たちが『静かにしろ』と笑い声を止めさせる

(平和だなー)
いろいろな状況下にある世界を見てみるとものすごく平和だと思えてくる。


【アー、アー、あっ!、
えー、以上10名に盛大な拍手をお願いします】

マイクが回復したようだ。

 

【続きまして、女子の発表を…】

男子の発表が終わってから、ようやく静かになってきた。
屋根に雨の当たる音が聞こえる。
雨が降り始めていたようだ。

『まじかよ。せっかくサッカー楽しみにしてたのに、天気予報うそじゃねぇか』
すぐ後ろの男子がつぶやく。


二階の窓を見ると黒い雲が見える。
雨が強くなる。
大雨になりそうだ。

【ー3組今宮 凛《イマミヤ リン》】
『ハイ』
女子が立ったことで、見上げていた方向が遮られる。

女子が動き始めるとまた窓に目をやる。

(ーー?)
一瞬窓の外に素早く黒い影が通った気がした。

早く流れていく黒い雲を見ているとどうやらそれを見間違えたようだ。
(寒いな…)

肌寒くなってきている。
この季節は衣替えが待ち遠しい。

【小説】学園バトルロワイヤル!【2話】

ーキーンコーンカーンコーン
  キーンコーンカーンコーン

【ジジッ…ジジジッ…】

教室のスピーカーから不具合を示す電子音が聞こえる。
【アー、テス…テス…テテステ…スト…テステス。
コーナイホーソ。テステ…テテテテス…】

声の高い男が話しているようだ。
あまり上手ではない言葉で気味の悪いリズムで語っている。
周りのざわつきが一気になくなる。

すると、突然女性の声に変わった。
【ハーイ☆
校内の皆さんおはようございまーす☆
今日集まってもらったのは、皆さんにゲームをしてもらうためでーす☆
ゲームの説明はセバスチャンおねがいしまーす☆】

 

甲高い女性の声から
年配の男性の声に切り替わる

【ご紹介に預かりましたセバスチャンであります。
ゲームとは
「記憶を取り戻し、この学校から出る」
というとても簡単なものであります。

あなた方の記憶はゲームの邪魔になると判断したため、消させていただいております。
ちなみに、校内のあなた方は言うなれば監禁されているのでありまして、
窓を見ていただければわかるとおり全部のシャッターがしまっております。

あなたがた人間の力では到底壊すどころか傷一つ付けることが出来ないのであります。

脱出する方法はただ一つ。

戦いをすることです。】

 

教室が、ざわつき始める。
ある男が教室のカーテンを開ける。
窓の方を見ると取っ手も鍵もついていないシャッターがされていて、近くの男たちが窓を開けようとしたり、蹴ったりもするがビクともしない。

放送でセバスチャンという男は続けて話す。
【左手首をご覧なさい。それは、生命時計と言いまして、
そこに表示されているのはあなた方のポイントである。】

左手の方に目を向けると腕時計のようなものが付いている。
時計の円盤部分には、ボタンが一つと細長い黒い画面が付いている。

ボタンを押してみると、黒い画面が光り、画面の上に立体に映像が出てくる。
いろいろな項目があったが、右下にポイントが書かれていた。
(120P…120ポイントって感じか…
ポイントの下に何か…あと9880P?)

それを見て察した。

【10000ポイント貯める事でこの建物から脱出できるのであります。】

 

【ポイントを貯める方法は、

1.我々の出すミッションをクリアする事。
2.戦いをして、相手のポイントを奪う事。
3.自動換算機にポイントとなる物を入れ、ポイントを生命時計に入れる事。

以上3つである。】


窓に向かって蹴りを入れていた男が苛立ち始める。
『ふざけんな!
ここから出しやがれ!』

先ほどの放送の声が強く反応する
【お静かに!!机に座りなさい!!
その部屋にはカメラとマイクがついているのだ。こちらには全てが丸見えである。今すぐ八つ裂きにしてもいいんーー】

放送の声が切り替わる。
今度は若い男の声のようだ。

【まあ、セバス。
まず、状況を教えてやったほうがいい。

やあ、諸君。
まず記憶を少しだけ取り戻させてあげよう。】

若い男がそう言うと、スピーカーから耳鳴りのような音が聞こえてきた。

【ーキーーーーン】
『何これっ。
頭、痛くない?』
ある女性がつぶやく。

【ーキーーーーキーーーーーン】

音が強くなる。

(っ!! 頭が割れる!!)
手で頭を押さえる。

教室が騒ぎ出す。

【キーーーーーーーーーーーーーン】

(意識がっ!!飛びそうだ!)

教室の中から声が消えていく。


【キーーー--- 】


僕は意識を失った

【小説】学園バトルロワイヤル! 【1話】

ーー伊藤 優ーー

ーガタンッ

「……っ!!」

頭の痛みに眼が覚める。
頭を机にもたげていたためかうっ血している。

触ってみると少しコブになっているようだ

 

(ここはどころう?)

よくある教室のよくある机で寝てしまっていたようだ。


周りには見知らぬ人々。

(…30人くらいかな?)

机が綺麗に整列して並んでいる。

服装を見ると皆が同じ学生服を着ている。

自分の服装も同じ制服だったが、見慣れた顔はどこにもなかった。
幾人かの話し声が聞こえるが、そのよそよそしさを見るとみんなお互いのことを知らないみたいだ。

 

ー?
(なんだ、あれ)
教室の後ろに大きな自動販売機のようなものが置いてある。
見た目は自動販売機に似ているが中心にタッチパネルのようなものがあり、大きな取り出し口が2つ付いている。

 

周りを見渡していると、左前の男性と目が合った。

机に座ったまま話しをしてみる。

「ここって、どこか分かる?」

男性は聞こえているのか、反応が薄い。

もう一度聞こうかと迷っていると
やっと返答した。

『うーん…わからないなー。
なんか全然思い出せないんだよね。
君は何か知らない?』

反応が無いと思っていたら、考えていたようだ。

「うーん…」
そう言われてみると、なんでここにいるのかも、どうやってここまで来たのかも覚えていない。


『昨日の夜ご飯は?』

「えっ!?」

『まあまあ、いいから。』

考えてみるが……
(思い出せない!?)

僕の表情を見ると、男は察したように頷く。

『そうなんだよねー。
全然思い出せないんだよね。』

 

家族、友人…何も思い出せない。
寝起きで意識がはっきりしてないだけなのか、それとも何か他の理由があるのか?
考えれば考えるほど記憶が無いことに気付く。
真っ暗の穴の中で遭難しているような
妙な不安が押し寄せて来る。

男は空気の重さを感じたのか、それとも同じことを考えていたのか

『まあ、そのうち思い出すでしょー。』
と言った。


ーふと、疑問が浮かんだ。

「僕の名前は伊藤 優《イトウ ユウ》
君の名前は?」

『遠藤 相太《エンドウ ソウタ》だよー。
好きな食べ物はメロンだよ。
…あれ?自分の名前は覚えてるね。』

「それと、メロンが好きなこともね」

記憶が全く無いという不安感の中で光を見つけた気がして、少し嬉しくなった。